海外で働くとは、互いの文化を尊重し、工夫して伝え合うこと
——海外就業プログラム(上海)体験談——

経済学部3年次 樋口 佳凜さん、経営学部3年次 朱 睿さん

2025/05/28

RIKKYO GLOBAL

OVERVIEW

グローバル教育センターが全学部生向けに提供するプログラム「海外ワークエクスペリエンスプログラム」は、自身の目的に沿って1年次から4年次の任意のタイミングで参加することができます。2024年度に化学試薬提供会社「TCI上海」の実習に参加した2人にお話をうかがいます。

インターンシップ初日歓迎写真(右が朱さん、左から2人目が樋口さん)

樋口 佳凜さん
経済学部 経済学科3年次(参加時2年次)
朱 睿さん
経営学部 国際経営学科3年次(参加時2年次)

  • 派遣先企業: TCI (Shanghai) Development Co., Ltd.
  • 派遣先: 中国 上海
  • 期間: 2025年2~3月(4週間)
  • 科目名: 全学共通科目総合系科目「海外ワークエクスペリエンス2」

◇参加のきっかけと目的を教えてください

朱さん

海外で働く経験を身に付け、自分のキャリア形成に役立てたいと考えたからです。大学入学時からグローバル志向のキャリアに関心があり、2年生までは英語開講の経営学講義や国際経営に関連する講義を中心に履修しました。しかし大学での勉強は座学?グループワークが中心で、海外拠点での業務運営や働き方を知るためには一度海外で働く経験が必要だと考えました。日本国内の外資系企業のインターンシップに参加することも検討しましたが、海外に出向くことが最適だと考え、本プログラムに参加しました。

樋口さん

私は、ワークエクスペリエンス参加の半年ほど前に訪中団の団員として一週間中国に赴き、現地の大学生と文化交流をしたことをきっかけに、中国をはじめとするアジア圏により興味を持っていました。そんな時に学内で本プログラムのポスターを見かけ、興味を惹かれました。私自身は経済学部で、専門とは異なる化学系の企業で経験を積むことに少し不安はありましたが、興味があることには、専門外でも未経験でも挑戦してみたい、という好奇心からTCI上海の実習に応募しました。失敗を恐れず、柔軟性を持って、海外でも通用する社会能力を身に付けたいという思いと、派遣先の文化を学びたいという思いの双方を持って参加しました。

◇派遣先企業、および今回携わった業務内容について教えてください

朱さん

今回は、TCI(Shanghai)Development Co., Ltd(以下、TCI上海)でワークエクスペリエンスを経験しました。TCI上海は、日本に本社を置く東京化成工業株式会社の海外子会社であり、中国国内において学術機関や製薬企業向けに試薬の製造?販売を行っています。

ワークエクスペリエンスでは、営業部、品質保証部、財務部などの複数の部署を回りながら、各部署の役割や企業活動全体に対する理解を深めました。実習中は顧客訪問の同行や現場での作業見学など、座学では得られない学びも多く体験させていただきました。この点、一般的な業務遂行型インターンシップと大きく異なり、ユニークな経験だったと考えています。

◇特に印象に残っている実習のエピソードを教えてください

朱さん

出荷前危険品

物流部での研修が特に印象に残っています。海運?空運における危険品取り扱い規則(IMDGコードやIATA規則)やTCI上海の物流戦略について学んだ後、出荷現場で梱包や出荷作業に参加しました。この経験を通じて原料の入荷から製品出荷まで、物流活動の一連のプロセスを理解することができました。また、単に自動化?省人化を進めるだけではコスト削減に繋がらないという難しさや、物流戦略の立案や指揮するマネージャーと現場作業を担うスタッフに期待される役割の違いなど、大学の講義だけでは得られない物流現場特有の工夫や課題にも気付くことができ、非常に貴重な学びとなりました。

樋口さん

上海交通大学研究室(クライアント)学生との写真

私が特に印象に残っているのは、営業部門の実習で、上海の大学への営業活動に同行した経験です。上海交通大学には、実際にキャンパス内で薬品がどのように使用されているかをヒアリングするため、何度か訪問しました。同大学の学生へのヒアリングでは、お互いの共通言語として英語を使ってコミュニケーションを取りました。双方にとって英語は第一言語ではなく、こうした状況で会話をする機会は日常的にはあまりありません。そのため、やりとりの内容は複雑な議論というよりも、簡単な内容確認が中心となりましたが、良い経験ができたと思っています。
また、その後の食事会で得意な絵を披露したことがきっかけで、モデルにした映画『哪吒(ナタ)』を、オフィス帰りに10人ほどで観に行くことになりました。言語や文化の壁を越えて交流できたことは、自分の適応力や語学力、積極性、柔軟性を高める良い機会となったと感じています。

◇文系専攻のお二人にとって、化学試薬の仕事に触れる機会はこれまでほとんどなかったのではないかと思います。実習を通じてどんな感想を持ちましたか

樋口さん

営業部KPI

マーケティングや営業部門に関心があり、TCI上海での実習に参加しましたが、技術職や研究部門といった未知の分野にも触れることで、化学試薬の面白さを肌で感じることができました。実習を通じて様々な部署を体験したことで、これまで接点のなかった分野についても具体的な業務内容を知ることができました。
個人的に興味を引かれたのは、化学薬品の中国語名です。興味深いことに、「化合物」などは日本語と共通する表現が多く、場合によっては化学式で見るよりも、簡体字で表記された名称のほうが直感的に理解しやすいと感じる場面もありました。
この機会がなければおそらく出会うことのなかった職種や業務に、中国語や英語を通じて関わることができ、良い経験ができたと感じています。

朱さん

工場内

試薬業界の高度な専門性と徹底した品質管理の在り方を知りました。参加前は「品質保証=純度の検査」という漠然としたイメージを持っていましたが、実際には純度だけでなく、不純物の種類や含有量についても複数の分析手法を用いて詳細に確認していることを学びました。また、化学試薬を安全かつ正確にお客様に届けるためには、分析部門、製造部門、物流部門が密に連携し、各国の法規制への対応や安定した原料供給、さらには継続的な品質改善など、多岐にわたるプロセスの改善?管理が必要であることを理解しました。

◇今回、複数名(実習時観光学部所属の4年生と3名)での参加でした。所属や学年の異なる学生と本プログラムに参加することで刺激を受けたことはありますか

樋口さん

3名それぞれの就職に対する考え方や、これまでの海外経験について共有することができました。お二方とも中華圏での滞在経験が豊富だったため、私も安心して活動に取り組むことができました。また、それぞれが所属する学部の専門性を踏まえた視点から、上海について意見を交わすことができ、とても有意義な時間となりました。実習中にはレポートやプレゼンテーション資料をお互いに共有し合いましたが、それぞれ異なる視点や知見を持っていることがよく分かり、とても面白かったです。

朱さん

特に印象的だったのは、4年生の参加者の方が流暢な中国語を話していた点です。中華圏でのインターンシップ経験を持ち、非母語話者でありながら現地社員とスムーズに会話を交わしている姿を見て、大きな刺激を受けました。私自身も将来海外志向のキャリアを目指しているので、その姿に倣って、日々の業務や会話の中で好奇心を持って社員さんに質問を投げかけるようにしました。初めは簡単な雑談から始めましたが、次第に業務の内容や業界の知識、企業文化に関する深い話を聞けるようになり、TCI上海の事業内容や営業部、物流部、財務部など、さまざまな部門の活動について広く学ぶことができました。

上海交通大学研究室(クライアント)訪問

◇プログラム参加を通じた気付きや自身の成長?変化を教えてください

樋口さん

1か月もの間、海外で生活するのは初めての経験だったため、参加前には不安もありました。しかし、勇気を出してワークエクスペリエンスに応募し、目標に向かって努力し、上海に渡り、仲間と過ごしたかけがえのない毎日は、私を一層成長させてくれたと思います。渡航前は、言語やスキルの向上といった目標ばかりを意識していましたが、実際に現地で過ごしてみると、人とのつながりの大切さや海外で生き抜く力など、多くのことを学ぶことができました。何よりも、この挑戦をしたことによって、たくさんの成果を得ることができました。日本に帰国してからは、気付けば自然とフットワークが軽くなったと感じています。

朱さん

私は2点あると感じています。1点目は、海外で働く上で最も重要なのは、現地の文化や価値観に溶け込もうとする姿勢であると実感しました。海外では自分がマイノリティとして現地社員と協働する立場になるため、信頼関係を築き、業務を円滑に進めていくには、相手の文化的背景や商慣習への配慮が欠かせません。駐在員の方が現地の文化に打ち解けている姿勢を見て、その重要性を改めて実感しました。また2点目として、日系企業の海外子会社でワークエクスペリエンスに参加することで、親子会社間の業務連携や海外拠点での業務運営など、将来のキャリア形成につながる多くの学びを得ることができました。総じて、将来海外志向のキャリアを築く上で必要な視点や行動を考える、貴重な機会となりました。

◇参加後の目標を教えてください

樋口さん

在学中は、中国語や韓国語など、様々な言語を習得したいと考えています。実際に上海で中国語を話してみたところ、うまく通じず、苦労する場面がありました。アジア経済学を専攻する者として、今後もアジア各国を数多く訪れたいと考えているので、より深く言語の勉強に励みたいと思います。加えて今回は、上海近郊の義烏市を訪れる機会もあり、自身の研究に関連する知見を得ることができたので、その経験や学びを卒業論文に活かしていきたいと考えています。
卒業後は、TCI上海で経験した国際的なマーケティングや購買調査、営業等の実務経験を強みとして活かしキャリアを築いていきたいと思います。

朱さん

今回のワークエクスペリエンスを通じて、現地の文化や価値観を理解しようと努める姿勢が、信頼関係を築き、業務を円滑に進める上で重要であると実感しました。この経験を今後の交換留学に活かし、現地の方と協働するプロジェクトや市民活動等に活かしたいと考えています。また、部門横断の実習を通じて、海外拠点の業務運営を知り、自分が関心を持つ業種や今後のキャリアの方向性が明確になりました。就職活動ではこれらの気付きをもとに、自らの価値観?やりがいと一致する企業に就職し、将来は海外ビジネスの第一線で、企業の海外展開を支える人材を目指していきます。

上海交通大学研究室(クライアント)学生との写真

◇参加を検討している立教生へメッセージをお願いします

朱さん

海外インターンシップに参加すること自体、慣れない言語と文化の中で考え、行動する勇気が必要です。特に、非英語圏の国や地域での就業体験に参加することに、不安を感じる方もいるかもしれません。しかし、非英語圏で共通言語としてお互いの第一言語ではない英語を使い、自分の意見を伝え、信頼関係を築く経験は、そこでしか得られない貴重な知見をもたらしてくれます。
海外ワークエクスペリエンスでは英語圏のプログラムも提供されていますが、個人的にはぜひ非英語圏の企業のワークエクスペリエンスに挑戦してみてほしいと思います。自身のキャリアビジョンを明確化し、かつ大学の授業では得られない貴重な知見を得られるはずです。

樋口さん

TCI上海での1か月間は、渡航前の予想を遥かに上回る特別な体験でした。実際に現場に立ってみて初めて知ることが多く、自分の力不足に気が付くことができました。不安もあると思いますが、まずはチャレンジしてみてください!
後書き
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。

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